「平均寿命」は健康水準の指標としてよく用いられています。我が国は、世界でも高い水準を維持しており、特に女性は1985年(昭和60年)から今日まで、世界第一位の座を守っています。こうした成果は、我が国の高い教育・経済水準、保健・医療水準、生活習慣の改善等によってもたらされたと考えられます。
一方、「健康寿命」とは、健康で支障なく日常の生活を送ることができる期間またはその指標の総称とされます。生活の質(QOL)を重視する考え方に基づき、WHO(世界保健機関)が2000年(平成12年)にこの概念を公表しました。
平均寿命から介護や病気で寝たきりの期間(自立した生活ができない期間)を引いたものが健康寿命になります。
つまり、何歳まで自立して健康に暮らせるかの指標です。
咀嚼機能がQOL の向上へ関与しているというデータもあり、「よくかめること」は、日常活動、全身的な健康、心の健康に重要なため、歯単体の話ではなく、咀嚼する「機能」を維持することが重要視されはじめています。
2006年の介護保険法の改正に伴い、介護予防のための新規サービスとして『口腔機能の向上』が加えられ、厚生労働省では口腔機能の向上のためのマニュアルも提案され、その重要性がクローズアップされるようになりました。
残っている歯が、20本を下回っていると咀嚼機能が著しく低下し、適切な栄養摂取の障害になりうると疫学調査の報告でも示されています。
1本の奥歯の噛む力は、人の体重ぐらいの力で、それが長い間続くと、肩こり・腰痛だけでなく、神経性の病気や内分泌異常などの不定愁訴の原因にもなります。
現在の日本は、歯がない、あるいはうまく噛めない老人が増加し、摂食できない、口腔が乾燥しうまく飲み込めない(嚥下障害)などが問題になっています。このように、少子高齢化と介護が世界一長寿国日本が直面している課題です。
よく噛むと顎の筋肉を介して刺激が脳や耳に伝わり、記憶や視力に影響しその老化を遅らせます。また、ゆっくり噛むことで満腹中枢が刺激され食事量が減少し、体脂肪が分解され、ダイエットやメタボリックシンドロームの予防になり、唾液の分泌の促進が活性酸素を抑制し、アンチエイジングや美容効果、がんの予防にもなります。
単に健康な歯をめざすのではなく、口腔機能を維持させるために健康な口腔、そして全身的にも精神的にも良好な真の「健康」を目指し、健康寿命を大きく延ばしていきたいものです。
松尾歯科医院では、生涯歯を残す唯一の方法、歯の定期検診を強くお勧めしています。下記のグラフとご自身を比べてみて下さい。なぜ日本人のほうが残っている歯が少ないのでしょうか?スウェーデンでは、国民の90%が定期的に歯科医院に通っています。歯科医院で定期的にチェックし予防または問題があれば初期段階で治療してしまうので、スウェーデンの人には歯が多く残っているのです。
平成17年の財団法人8020推進財団調査によると、日本で歯を失う最大の原因は、歯周病という結果が出ています。現在、日本では30歳代の約8割が歯周病にかかっていると言われ、「35歳以上の約70%が、むし歯ではなく、歯周病が原因で歯を失っている」と報告されています。言い換えれば「歯周病」を予防することができれば、歯を失わずにすむ確率が増すということです。